我が家にやってきたZ1000Mk2。
改めてじっくりと見渡して思うに、私の想像していたZ1000Mk2像とはかけ離れたシロモノでした。
Z1000Mk2ってこんなにカッコ悪かったっけ?
1979年式はライトの下、フォークとフォークを結ぶステムエンブレムが付かないことも精彩を欠く要因のひとつではありますが、それを差し引いても何かパッとしない。
実用一点張りのシーシーバーもダサ過ぎる。
本当にこれ、Z1000Mk2なのかなぁ?
不安がよぎります。
かかりそうでかからないエンジン。シロートは余計なことをせず、プロにおまかせ
購入するにあたり前オーナーがバッテリーを交換してくれたので、試しにセルモーターを回してみました。
おお、セルは動きます。
でもエンジンは……かかりそうで、かからない。
もうちょっと続ければかかるかも……。
いや、止めておきましょう。
こういう場合、私ははしゃいで失敗するタイプの人間です。
すぐに調子に乗って痛いめを見る。
10代の頃、近所の民家の庭先にベスパPX200が置いてありました。探偵物語の工藤ちゃんが乗っていたアレの後期型です。
数日様子を見ていたけれど走らせている気配が無い。
そこである日、もし乗っていなければ譲っていただけないかとお宅を訪ねてみました。
すると家主のお父さんが言ってくれたのです。
「仕事で大阪に越してしまった息子のなんだよ。あいつももう乗らないし、欲しけりゃ持ってっていいよ」。
つまりタダです。
おおおっ! 何という幸運、何という無知なオジサマ。
ベスパPX200は当時でもそれなりのお値段でしたから。
とにかく息子さんと話して変な知恵を付けられると困るので、急いで近くの和菓子屋さんでドラ焼きの詰め合わせを買って、夕方には物々交換のような形で譲り受けたのでした。
その場で確かめると、古そうですがガソリンが入っていました。バッテリーが上がってセルは動かなかったけれど、同行した友達と押しがけをしたら
パランパンパンパンッ! とエンジンがかかったのです。
スゲー!!!
喜び勇んで乗り回す2人。
本当にラッキーです。だってタダですから。タダ!
家の周りをアホみたいに走っていました。
すると、突然
ギャギャギャギャッ!!
エンジンが止まり、後輪がロック。
以来ウンともスンとも言わなくなってしまったのです。
あれれれれっ、どうしたどうした?
バイク屋さんに持っていた答えは、エンジンの焼き付き。
浮かれてはしゃいでいた我々は2ストオイルの残量までは見ていなかったのでした。
PXは分離給油なんですね。知らなかった。
結局ベスパの専門ショップでエンジンをフルオーバーホールしたらドエライ金額になってしまい、最終的にはちっともお得ではなかった経緯があります。
一事が万事こういう性格です。
Z1000Mk2もしつこくセルを回しているといや〜な予感がしてきたので、トレーラーに載せてジョーショーオートに向かうことにしました。
COSTA MESA(コスタメサ)という町のオートショップ、JOSHO AUTO(常勝オート)はS30Zの主治医でもあります。
ロータリーからV12まで何でも触るジョーショーオート、時々私のような趣味の人間が旧車を持ち込みますが、普段はフツーの修理屋さんです。
オレンジカウンティに暮らす多くの日本人がお世話になっています。
オーナーでありメカニックのトモさんは日本のマツダスピードを経てカリフォルニアに渡り、フェラーリディーラーのメカから独立した人物なので、元々バイクとは関係のない経歴ですが趣味でSUZUKIカタナに乗っていてバイクの修理もお手の物。
Z1000Mk2を持ち込んだら案の定喜んでくれました。
おまけにグサッとくるひと言。
「う〜ん、なんか冴えないバイクですねぇ」
……余計なお世話です。
ザッと見たところ電気系に問題はなさそう。タンクの中もサビてはいない。
幸いにもキャブレターのオーバーホールだけで一応は走れるようになるんじゃないか、と診断が下ったので、しばらくの入院となりました。
ヒマな時にちょこちょこと見て下さると。
問題山積み、前途多難なZ1000Mk2
その日の夜、さっとくトモさんから写真付きで連絡が入ります。
「仕事が終わってバイクを見たけど、エンジンマウントが無かったり、ボルトが抜けてたり、色んなところにバイクのだらしなさが現れてるんですよね」
ボディ右側、マウントなし。
同じく右側。エンジンが留まってない。
左側。ネジを持ったら抜けちゃった。
ジャンクを承知で買ってきたZ1000Mk2ですが……。
前途は多難のようです。
PS.“アメリカでバイクの免許を取ろう! その1”をアップしました。