しばらくはド・ノーマルの、いわば40年前のニッサンが作った“純正の味わい”を楽しもう、などと余裕しゃくしゃくで構えていた私ですが、実際に毎日ちょこちょこと走り始めてみると旧車ならではの様々な問題点に直面しました。
目次
中古S30Zの問題点をあらい出す
代表的なのがこれ
ハンドリングがダルい
ショックがスコスコしている
高速道路でふらつく
ギアが低い
カスタムしたい
最後の項目以外は足回りと駆動系の問題ですね。
前オーナーが大切に所有していたとはいえ、未だレストア経験のない個体ですから各部のブッシュなどは当然40年前のシロモノ。いつ交換したのか分からないショックアブソーバーも抜け切っています。
また、私のS30Zが備えているトランスミッションは4速TM。今のアメリカの交通状況の中で、上限4速はひじょ〜に遅いのです。
US仕様のS30Zが5速MTを用意したのは最終型の1977、’78年式だけでした。標準装備が4MTで、5MTと3TATはオプション設定だったのです。そのため5MTを備えた個体はかなりレアでした。
L28用5MTを探せ!
L28を標準装備するストックの280Zは、ワパー的には現代のカリフォルニアでも全く不満を感じません。チューニングエンジンに乗る方々に言わせれば『L28のノーマルは遅い』、『特に当時の純正インジェクションは頭が悪くて話にならない』そうですが、どうしてどうして、程度のいいL28はノーマルでも確実に速いのです。
私の家はカリフォルニアのロサンゼルス郊外、オレンジカウンティという所にあります。周囲の一般道、いわゆる下道の制限速度は72キロ(45マイル)が一般的。高速道路は都会エリアの標識が104キロ(65マイル)で、常用域は128キロ(80マイル)程度です。
下道も高速も日本の速度より遙かに高い。
しかし、まったく問題なし。下からモリモリとトルクが溢れ、上までストレスなくイッキに回ります……と言っても5500rpmくらいですけどねぇ。
で、4速までシフトアップしてまだまだ行けるのに、その上がない。
あ〜〜も〜〜! って感じです。
思わず幻の5速に向けてシフトノブを握る手が右斜め上方を目指します。
じれったい。
もどかしい。
くやしい。
かなしい。
こりゃダメだ。
5速に載せ替えましょう!
狙いは280ZX用クロスミッション
上記がアメリカで発売されたS30系、S130系のトランスミッションのギア比です。
S130系はアメリカでは280ZXの名で売られました。表の右端のBW T5はボルグワーナー(Borg Warner)製の5MTで、1982年に登場したL28ターボ専用。ネーミングはカッコいいのですが、ノンターボのL28を積む私のS30Zには合いません。
欲しいのは“280b 1981-83”と記された5MT。280ZXに搭載されていたクロスミッションで、無加工でポン付け出来ます。
ミッション急騰、早い者勝ち
S30Z同様S130系もアメリカでは爆発的なヒットとなりました。
1979年=86,007台 1980年=53,687台 1981年=73,177台 1982年=63,855台 1983年=55,011台 ※一部300ZX含む
それでもやっぱり、現存数はめちゃめちゃ少ないです。しかもこの1、2年でパーツは急騰。例えば1年前に$900程度だった中古の5MTが今は$2000前後が相場です。
S30Zの人気に伴いミッションを載せ換えるケースが増えたのかも知れません。
私はたまたま友人のガレージに転がっていた1981年式を発見、$890で商談成立!
はじめはオーバーホールしてから載せ替えようかと思ったのですが、ミッションの前オーナー曰く、「絶好調!」とのことだったので、それを信じて早速交換です。
S30ZにS130系5MTを載せ替える
ロサンゼルスを中心とした南カリフォルニアには日本人メカニックがたくさんいますが、中でもウデがいいと評判なのがコスタメサ市の“ジョーショーオート”さん。日本語で書くと常勝オート。トモさんというメカニック兼オーナーがひとりで切り盛りしているショップで、彼は日本のマツダスピードを経てアメリカのフェラーリディーラーで修行を積んだ変わり種です。
自分でフェラーリ355を所有する傍ら、RX3、SA22とFCのRX7も所有する旧車ファンでもあります。
私が仕事で使っているジェッタもフィットもバイクも全てトモさんに面倒を見ていただいているのですが、S30Zを持ち込んだらことのほか喜んでくれました。
クルマイジりが大好きなメカニックはいいですね!
ステップbyステップ S30Zミッション交換
ひえ〜〜〜
それにしても汚い。オイルと土とその他の汚れでドロドロ状態。
下ろします。
積年の恨みつらみがこびりついたように汚い。
1977年式280Zの4MT
↓
1981年式280ZXの5MT
5MTは高圧洗浄機でザッと洗い、サッと缶スプレーしました。
様々なパーツも交換リフレッシュ!
ミッションの載せ替えに際して各部の消耗パーツや劣化したラバー類なども新調します。
ミッションマウント(インシュレーター)
かなりヤレてます。
純正パーツナンバー 11320-N3000
アメリカではNISSAN純正のミッションマウントが$107〜$130(日本の倍以上!!)で手に入りますが、いずれ強化品に換えたい思惑もあり、今回はAmazonで社外のDEA Products社製を$26.13で購入。
パーツナンバー DEA A2741
クロスメンバーブッシュ
ミッションのメンバーから古いブッシュを抜くのは一苦労。
油圧プレス機で押し出し
残りカスを炎で焼き
こそげ落として
ツルツルに
メンバーのブッシュは純正がないのでEnergy Suspension(エナジーサスペンション)のウレタン製を採用。
エナジーのパーツナンバーは7.1101G
クラッチ
見た目はまだまだ使える様子だったのですが、記されたメーカーと生産国を見たらアメリカではすこぶる評判の悪い製品だったので交換しました。
こちらは評判のいいEXEDY(エクセディ)社製。
やっぱり日本の会社が一番。
Amazonで$111.09
パーツナンバー 06009
クラッチマスターシリンダー
古くなり粉が吹いていたマスターシリンダーも新品に。
右がBeck Arnley製
Amazonで$22.90
パーツナンバー 072-6521
レリーズシリンダー(オペレーティングシリンダー)& クラッチホース
共にBeck Arnley製
ホース 073-0218
シリンダー 072-1191
各種ブーツ類
ダストブーツとコントロールレバーブーツ、クラッチレバーブーツはまだ純正品が手に入ります。
ニッサン純正ダストブーツ
パーツナンバー 32869-E8700
$28.87
ニッサン純正コントロールレバーブーツ
パーツナンバー 32862-E9300
$5.53
ニッサン純正クラッチレバーブーツ
パーツナンバー 30542-E9000
$10.10
いずれもeBayで購入しました。
ミッション交換がカスタムの序章……だった
S30Zの4MTがあまりにも物足りないので何気ない気持ちで5MTへの変更を試みましたが、いざ車体をリフトに上げてミッション交換など初めてみると、足回りを含めあちらこちらの老朽化が目立ちます。
アレもやらなきゃ。
コレもやらなきゃ。
と手を出しているうちに、気が付けばこんな状態になってしましました……。
え〜い、ブッシュ全部換えたれっ!
ついでにシャコタンにしちゃえっ!