US仕様のS30Zの外観が日本のそれと大きく変わったのは1975年、通称『5マイルバンパー』と呼ばれる大型のバンパーが装着されてからです。
これは、1960年代の乗用車やスポーツカーがスタイリングの向上を追求する過程でバンパーを小型化していったのに対し、衝突時における自動車のライト、安全装置、エンジンなどの損傷を抑えることを目的にアメリカで設けられたレギュレーションによるものでした。時速5マイル(8キロ)以内での衝突であればボディにダメージを与えないよう、バンパーは伸縮するステーで取り付けられており、またバンパー自体の大きな破損も許されていなかったため、硬質で大型のモノがセットされたのです。
お陰でアメ車、日本車、ヨーロッパ車を問わず後付け感バリバリの巨大な突起物により自動車のスタイリングは大きく崩れることになりました。中でも衝撃的だったのはランボルギーニ・カウンタック。ネットで検索してみて下さい。ハンズで買ったパーティ用の付け髭みたいです。ただしこちらは脱着が可能で、外したら最後2度と付け直す人が少なかったのでしょう、今ではまず見ることがありません。
S30Zの場合は5マイルバンパーの装着と同時に、フロントのウインカーが位置を変えました。従来はバンパーの下に配置されていたものが、グリルに内蔵されたのです。
これがまたUS仕様のS30Zを何となくドンくさい印象にする要因のひとつとなりました。フンガッと鼻の穴を広げている雰囲気というか……。
※カバさんはあくまでイメージ。本当は最強です。
今回はこのフロントマスクを引き締め、Zの二枚目化に挑戦したいと思います。
目次
USグリル引き締め効果 その1 フォグランプ編
ファッションにはひどく疎い方なのですが、聞くところによるとオシャレさんは視線誘導がうまいそうですね。例えば身長が低めの方はちょっと目を引くメガネやネックレスで相手の視線を上に向けるとか、逆に高いことを気にする方は派手なバッグなどを手に持つことで周囲の視線を下に誘導する。
そこで思いついたのが、フォグランプの装着でした。
フォグによってグリルから視線をかわしてはどうかと。
日本のS30乗りでフォグランプを付ける人はまずいないでしょう。
しかし子供の頃からフォーミュラーカーよりラリーカーが好きだった私としては、モンテカルロやサファリラリーなどの影響もあって、S30Zにフォグランプはありなのです。おまけに私のZには怒濤の5マイルバンパーが鎮座しているのでステーの取り付けには事欠かない。
また、アルピーヌA110が似合うのだから、S30Zにもいけるのではないだろうかと。
早速画像ソフトでシミュレーションすることに。
その1 バンパー上部パターン
その2 バンパー中央パターン
その3 バンパー下部パターン
およよよ、意外といいんじゃないでしょうか? シビエやマーシャルもシブいのですが、アメリカンテイスト? を自負する私のZはあえてKCライト。
S30Zにフォグ、私個人としては全くありです。そのうち検討いたします。
USグリル引き締め効果 その2 ペイント編
元々の色がどうだったのか分かりませんが、グリル自体がガッサガサに粉を吹いているのも顔をぼやけさせる原因のひとつ。ペイントしてキリッとシャープな印象を狙うのも手です。
缶スプレーをササッと吹くだけなので、フォグを付けるより手軽なのもいい。
今回は取りあえずこのセンで行きましょう。
グリルを外す
輸出用S30Z後期のグリルは矢印が記す6本のネジで留まっています。全て“+”ネジ。Aはウインカー・ベゼルの裏に隠れているので、始めにウインカーを外しました。
うわっ、汚ッ! 洗います。
その後、Bをドライバーで緩めれば、グリルは簡単に外れます。
と、舐めてかかっていたら、ナメました。4本全部ナメました。
5マイルバンパーを外す
旧車あるあるですね。固着したネジを回したら、いとも簡単にネジ山が崩壊しました。こうなったらドリルでもむしかありません。すると5マイルバンパーがいつにも増して存在感を主張しはじめました。この出っ張りがジャマなのです。ドリルが届かない。……外さないと始まらない。
バンパーは基本的には2本のショックアブソーバー付きステーで、それぞれ2つのボルトで留まっていました。
両端は黒いラバー? プラスチック? とにかく硬質なクワガタのハサミと、やはりボルト留め。
バンパーは想像と寸分違わぬ重量です。見た目より軽くも重くもありません。ホント、この通りフツーに重いです。前後のバンパーを外せば確実にZのパフォーマンスが向上することでしょう。
しかしこういう考えも頭をよぎります。
フレームから伸びたステーにこれだけ頑丈なバンパーが直結しているのだから、かなりボディ剛性に貢献しているのではないか。
真意のほどは分かりません。
ネジはドリルでやっつけました。
グリルをグロスブラックでペイント
グリルは経年劣化で表面がこんなにザラザラ。サンドペーパーで簡単に地ならしをして、さっと洗ってホームセンターで購入した缶スプレーを吹き付けます。マットブラックにするか艶ありにするかで迷った末、キリッとするのが目的だったことを思い出して艶ありをチョイス。脱脂やサフェは手を抜いちゃいました。
ベゼルも同色でペイントし、ウインカーはコンパウンドで艶だし。
グリルペイントの効果は絶大
ただ缶スプレーで塗るという単純な作業ですが、かなりの効果が得られたのではないでしょうか。みすぼらしくボヤッとした雰囲気も改善されたと感じます。費用が缶スプレー代の$7.25だけというのも嬉しい。
フォグランプは今後の課題としていつか追求しましょう。
Before
After
Before
After
オーナーだけが悦に入る自己満足の世界だけど、休日にコツコツやるのが自動車趣味の醍醐味ですよね。