グランド・ナショナル・ロードスター・ショー2020

クルマを速く走らせたい、カッコよく見せたい、そんな単純な欲求を具現化することから生まれたアメリカのホットロッド・カルチャーは1930年代が発祥だと言われている。あれから約90年。今やその領域はアートへと広がり、毎年数多くの芸術作品が誕生している。

1950年より続く『Grand National Roadster Show(グランド・ナショナル・ロードスター・ショー=GNRS)』は、世界で最も長い歴史を持つインドアカーショーであり、デトロイト・オートラマと2分する、アメリカで、いや世界で最も権威のあるホットロッドショーのひとつだ。例えるならカスタム界におけるオリンピック、その頂点に君臨する“America’s Most Beautiful Roadster”アワードに輝くクルマは、金メダル保持車といえよう。トップクラスのマシンともなれば全体の99%がハンドメイドされ、製作費は億単位。何よりも美しく、そしてクールな1台を目指してビルダーたちはプレスラインのひと筋、ネジ山の盛り上がり方ひとつ、サスペンション・アーム1本、ペイントの配合の一滴にまでこだわり感性を注ぎ込むのだ。そして導き出すのは世界で1台だけのアート作品。アメリカ人たちがGNRSを“ホットロッドのギャラリー”、“カスタムの美術館”と称するのはこうした理由だ。

去る1月24日(金曜日)〜26日(日曜日)の3日間に渡り、ロサンゼルス郊外のポモナ・フェアグラウンドにてグランド・ナショナル・ロードスター・ショー2020が開催された。もちろんトップカテゴリーの連中が目指すのはAMBR賞(America’s Most Beautiful Roadster)だ。しかし500台以上が集まる会場には他にもたくさんの魅力的、歴史的なマシンが並び、観客を盛り上げた。

ここではAMBR受賞車などのお馴染みなマシンは本家のWebサイトでご覧頂くとして、別の様々なジャンルのとびきりなロッド&カスタムカーをご紹介したい。

1969 Chevrolet Camaro

カリフォルニア州リバーサイドにファクトリーを構えるLOPEZ CUSTOMSが製作した1969年式シボレー・カマロ。全体をスムージングし、オリジナルのプレスラインを崩さぬよう巧みにワイド化したボディが圧巻。インテリアは高級ヨーロピアンを彷彿とさせる上質な素材とデザインを採用し、レストモッドをひとつ上の領域に押し上げた1台。ホイールはHRE製でフロントが19×9.5J、リアが20×12Jサイズ。特徴的なのはマーキュリー製のレース用ボートエンジン、SB4を採用していることで、7.0ℓの排気量から750馬力を発揮する。ダッシュボードからドアパネル、シート、センターコンソールに至るまで全てがワンオフ製作だ。

 

1963 Chevrolet Corvette

2015年にグランド・ナショナル・ロードスター・ショーにおける最優秀賞、“America’s Most Beautiful Roadster”賞を獲得したこともあるテネシー州の名門、Alloway’s HotRod Shopによる1963年式コルベット。ブラック×ブルー×クロームの3色を組み合わせて“輝き”を強調したスタイル。ボンネットの下には502クレイトモーターをコンバートし、カスタムインジェクションでドライブする。出力は500馬力。ビレットスペシャリティーズ製のホイールはフロント17×7J、リア20×10Jで特注のブルーラインタイヤと組み合わせている。

 

1970 Chevrolet Chevelle

上のコルベットの兄弟車として制作された’70年式シェベル。’60年代から’70年代のアメ車が多く採用してたカラフルでシャイニーなビニール製インテリアの雰囲気をレザーで再現し、ポップで高級感溢れるイマドキのホットロッドに仕上げている。LSX454は627馬力の実力。

 

1965 Pontiac Acadian

シェビーⅡとプラットフォームを共有するカナダGMのコンパクトモデル、ポンティアック・アカディアン。純正には120馬力の直列6気筒194キュービックインチ・エンジンが搭載されていたが、現車は400キュービックインチ(約6.5ℓ)V8に積み替えられ、トランスミッションも2速から4速ATに変更されている。シャシーは現行車に負けず劣らぬハイパフォーマンスを発揮するロードスターショップ(イリノイ州)が製作したスペシャルメイド。見た目だけでなく走りも本格的な1台だ。

 

1980 GMC Sierra

今アメリカで大人気、中古車相場も高騰しているGM系C/Kピックアップ・トラック。中でもスクエアボディと呼ばれるサードジェネレーションはセカンドジェネレーションに続くモテぶりだ。ご覧のシエラは配線類を隠した350エンジンが美しく、グロスオレンジとマットなブロンズの同系色を上手に配したコントラストが見事。ミッションはターボ350。インテリアはダッシュボード、ドアパネル、ヘッドライナー、シートを全て高級レザーで張り替え済み。

 

1957 Chevrolet Corvette

C1コルベットのエレガントさを最大限にブラッシュアップした1957年式。パステル系ペイントの優しさとクロームの輝きによるコントラストが美しいハーモニーを奏でている。エンジンを高年式のハイパワーモデルにスワップしながらも、力強さを強調し過ぎないオトナのカスタム。

1970 Dodge Challenger

 

大戦中の航空機をイメージさせるアグレッシブさとイマドキモダンな雰囲気を両立させたチャレンジャー。ドアを開けたとき、フロアとシートの段差の少なさにチャネリングの過激さを見ることが出来る。製作したのはオーストラリアのRob Zahabi。572キュービックインチ(約9.4ℓ)のHEMIエンジンは1000馬力オーバーを絞り出し、トレメック製T56(6速MT)を介して極太20インチタイヤを回転させる。

 

1971 Datsun 240z

日本車を代表するクラシックカーとして絶大な人気を誇る初期型フェアレディーZ、S30系。モアパワーを求める際、日本ではL型エンジンのチューニングが盛んだが、アメリカではV8、特にシボレー製のLSモーターに載せ替えるのが常套手段で、コンバージョンキットも市販されている。ただ、現車のようにS30をレストモッドに仕上げるのは珍しいケース。アメリカでもこれ1台かも知れない。

 

1932 Ford Roadster Pickup

ミシガン州に本拠地を置くIonia HotRod ShopのDenny LeskyとGalpin Speed Shop(カリフォルニア州)のDave Shutenという、ロッド&カスタム界の巨匠たちによる共演。今年のAmerica’s Most Beautiful Roadsterの最終選考に残った1台。前後のサスペンションやフレームにも惜しみなくクロームをおごっている。

 

1922 Ford Motel T Roadster Pickup

アメリカの俳優兼カスタムビルダーであるノーム・グラボウスキーが制作した1922年式モデルT。クッキーTの愛称で親しまれ、LIFEマガジンやドラマ『ピーターガン』に登場するなど、あらゆるメディアを賑わした’50年代を代表するホットロッドだ。そのため何台ものクローンが作られたが、現車こそがオリジナル。2018年のメカム・オークションで44万ドル(約5000万円)で落札され、ご覧のスタイルに復元された。

 

Leg Show T

1970年に開催されグランド・ナショナル・ロードスター・ショーで華々しいデビューを飾り、ストリート・ロードスター・クラスでウィナーに輝いたレッグ・ショーT。惜しくも最高峰である“America’s Most Beautiful Roadster”アワードは逃したものの、名門“ROD & Custom誌”の表紙を飾るなど’70年代のホットロッドシーンを牽引した1台。そんなレジェンドカーが50年の時を経て、再びグランド・ナショナル・ロードスター・ショーにカンバック。各界から熱い視線を集めた。

 

4 Engined “Showboat”

俳優であり、レーサーとしても名を馳せたトミー・アイボがドライブしたユニークなドラッグマシンの中でも、特に印象的なのが4つのエンジンを搭載する“ショーボート”だ。V8エンジンを連結してV16となった動力を後輪へ、もう片方のV16を前輪へ伝達する4WDシステム。一般的なドラッグマシンがバーンナウトを行うときには後輪からのみ白煙を上げるが、現車は前輪からも噴き出して圧巻のパフォーマンスを披露する。“Tommy Ivo 4 Engine”などのキーワードで検索すれば迫力の走りを見ることが出来る。ボディはビュイックのステーションワゴンを仮装。

 

1959 Chevrolet Corvette

2019年Xtreme Pro Mods Westシリーズのチャンピオンマシン。471キュービックインチ(約7.2ℓ)の排気量を持つクライスラー製HEMIエンジンに巨大なブロワをドッキングさせ、最高出力は4000馬力に迫る。1/4マイルを5.69秒で走り抜け、その際のトップスピードは時速419キロの達する。

 

1973 Ford Mustang Funny Car

  

1970年代のファニーカーだって年を追うごとに機関をアップデートし、現役レーサーとして観客を魅了している。ご覧の’73マスタングのボディを仮装するマシンは426キュービックインチ(約7.0ℓ)の高年式エンジンに載せ替えられ、パワーアップのためにナイトラスをプラス。ドライバーはハワイ出身の日系アメリカン、ライアン・コンノ。

 

1969 Dragster

’70年代のファニーカーもカッコいいが、’60年代後期のガス・ドラッグスターも機能美に溢れていてクールだ。ニトロメタンを燃料とするクライスラー製HEMIエンジンは398キュービックインチ(約6.52ℓ)の排気量。その上部に巨大ブロワを乗せ、今でも1/4マイルを6秒台で駆け抜ける。簡素なコクピットが何とも心細くてエキサイティング。

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