都会の夜のS30Z Night-1

日本の旧車界を牽引するスペシャルショップ“スターロード”のS30Zを撮り下ろした(2017年撮影)。都会の光を受け流す滑らかなボディラインと喧噪に共鳴するL28改のエンジン音。そのZは明らかに他とは何かが違った。物語の中だけじゃない。『そういうクルマ』は間違い無く存在すると知る。

よく、あのクルマはオーラが違うとか、いい雰囲気が出ていると耳にすることがあるが、マンガの世界のハナシだと思ったら間違いだ。車種もボディ形状もまったく同じなのに、空気感が違う個体は確かに存在する。スターロードが製作するクルマがそれだ。

 日本旧車のスペシャリストとして世界に名高いスターロードのマシンは、『作品』と称されることが多い。ただし、ただ美しさを競うショーカーという意味ではない。彼らの作る旧車はあくまでもストリートが主戦場。真夜中の湾岸を200キロ、時には250キロオーバーでクルーズできるホンキの走りと、デートカーとして女性から不満の出ない乗り心地&快適性がポイントだ。走ってナンボの世界。それなのに芸術品扱いされる理由は、前記したオーラや雰囲気にあるのだろう。

 「別にスペシャルなことは何もない。地味だけれど、どれだけベースを丁寧に作るか、追求するのはこの部分。」

 と話すのは代表の井上氏。レストアする際、まず鉄板を叩き、伸ばし、ボディラインを新車以上のクオリティまで修正するのが大切だと言う。パテを盛ってごまかす仕事はしない。どんなに綺麗にペイントしても、経年劣化で必ずボロが出るからだ。数ヶ月をかけてひたすら叩く。ユーザーに長く乗ってもらうため。

 「目に見える派手さは無いけれど、普通のクルマとそうでないクルマの違いが生まれるとしたら、そこなのかも。」

 サーキット仕様以外はロールケージを組まないのもスターロードの流儀だ。長年の経験からスポット増しの丁度いい塩梅を熟知していて、キッチリと剛性を出してくる。それでいて乗り心地のいいボディ。時にはストラットタワーバーすら組むのを嫌う。

 こうして仕上げたボディに積むのはL28改3.0ℓ。1/100グラム単位で重量を揃えた鍛造ピストンを始め、下はクランクシャフトから上はヘッドカバーまで、全てがスペシャルメイド。軽くアクセルを吹かせば、タコメーターの針は一気に7000回転を超える。ソレックスの44φが雄叫びを上げて空気を吸い込むが、しっかりと組まれたL型は絹のようになめからだ。L28改メカチューンの醍醐味。

 極めつけはフルモデルチェンジしたスターロード製車高調整式サスペンション。一般道、高速道路、サーキットでテストにテストを重ねた減衰力調整付(30段)のコイルオーバーは、前作に比べて完全にクオリティと快適性が向上、Zに異次元の走りをもたらす。

アストンマーチンのグリーンをアレンジしたボディカラーは光によって表情を変える。L28改3.0ℓは300馬力オーバー。モリモリッと沸くトルクは軽量コンパクトなボディを凄い勢いで異次元の世界へと導く。トランスミッションはRB用5速をセット。

ホイールはGlowstar(グロースター)の15インチで、ブラックカットディスクにブロンズアルマイトのリムをセットした3ピース。フロント8.5J、-34。リア10J、-28。タイヤは195/55&225/50。車高調はスターロードオリジナル。

2017年ヴィンテージモータース掲載

Special Thanks to Starroad