走る、曲がる、止まるを極めた’69カマロ

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次世代のホットロッド、それが『プロツーリング!』

A-cars掲載改訂

ホットロッドの歴史は進化の歴史。その時代に合った最新メソッドをふんだんに盛り込み最速を追求することが原点。今、アメリカのホットロッドは大きく変わりつつある。“レーシング” を身につけたモノのみが時代の頂点に君臨することが出来る。

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 その言葉が生まれてから半世紀以上が経ち、ジャンルや派生系、思想が多岐にわたることで広義に解釈可能な『HOTROD』に比べれば、『Pro-Touring(プロツーリング)』という言葉は新しい。ゆえに今ここで、簡単にではあるが明確なカテゴライズできる。プロツーリングとは、ドライブトレイン、サスペンション、ブレーキシステムなどのあらゆるコンポーネンツを最新技術でブラッシュアップしたビンテージ・アメリカンを指す。同じ意味で『Resto Mod』と言う言葉もあるが、どちらかと言えばレストモッドは幅広い年代や車種に共通するカスタムで、プロツーリングはマッスルカー世代にフォーカスしている。

 代表的なのがUSCA(アルティメット・ストリート・カー・アソシエーション)GTVクラスで活躍するビンテージ・アメリカンたちだ。つまり、こんなカマロである。旧き良きアメ車のスタイリングを保ちつつ、現代のスポーツカーと対等に渡り合える強靱な足腰を備えている。

 ロブ・マッキントッシュは今年71歳。コンサルタント会社をリタイヤした後、自宅の庭に広大なガレージを建設してマシン作りに専念するUSCAドライバーだ。ご覧の’69カマロもロブが作り上げ、自らがステアリングを握って競技に出場している。

「以前はマッスルカーのカスタムと言えばドラッグレース仕様の直線専用が主だった。気合いの入ったヤツはリアをマルチリンク化してホーシングをナロードしてね。まぁお決まりのパターンだね。ところが2000年代に入りUSCAが盛んになるとアメリカのホットロット事情は大きく変わるんだ。走る、曲がる、止まるの3大要素を突き詰めた究極のマシンが要求されるようになる。それがプロツーリングだね。既存のビンテージアメリカの概念を捨て、より合理的に、より快適に、より軽快にモダナイズドしたマシンこそが本当の速さを得られるとわかったんだ」。

走り出したら止まらない、御年71

自らがオーナーを務めた経営コンサルタント会社を後進に道を譲る形でリタイヤし、現在はマシン作りとレースに明け暮れるロブ・マッキントッシュ氏、71歳。

2エーカー(2448坪=8092㎡)という広大な敷地を持つ自宅の庭に建てられたガレージ。この中には’69カマロの他に製作を待つ’71カマロ、’71シェベル、’68カマロなどが収まっている。ガレージはさながらマシンショップの様相を呈しており工具だけでなく、旋盤、ドリル、溶接機器なども揃っている。向こうに見えるのは’71年型シェベル。スペシャルメイドのフレームを有した次期USCAマシンとして製作中。またガレージ前の赤いシェベルは週末のドライブ用。

 

’69カマロ、純正パートはルーフだけ

トランク内にまでロールケージを貫通させて強靱に仕上げたボディ。このクルマで購入時から残っているパートはルーフのみ。その他のボディは全てアフターマーケットの軽量パーツで構成し、前後のフェンダーはワイド化。

 

698馬力のスマートエンジン

427SBC(スモールブロック・クレート)エンジンをベースにカリフォルニア州マリエータのNogradyレーシングがチューニング。インジェクション化されたそれは最高出力698馬力のモンスターで、街乗りも渋滞も問題無し。レースはいつも自走で参加する。

 

軽量化×アイディアで勝負

熱抜きようのベントを備えたボンネットはドライカーボン製。同じくカーボンで製作されたワンオフのスポイラーはセンターにダクトが設けられ、その奥にはパワーステアリング用のオイルクーラーがセットされている。

 

随所におごられるカーボンパーツの数々

トランク、スポイラー、ディフューザー、バンパー、ドアミラーもオールカーボン。サスペンションシステムは前後共にデトロイトスピードのコイルオーバーだが、リバーサイドのPCHRODSによるスペシャルチューニングが加えられた。

 

バドニックの先進モノブロック

エンジン強化に伴いブレーキキャリパーはコルベットZO6から移植。ベアの14インチローターと組み合わせている。ホイールはバドニックの18インチ。ホイールのオフセットは違うが、タイヤは前後共通で315/30という極太サイズでグリップ力を確保する。

 

ハイテク・コントロールユニット

センターコンソールに設置されたモニターにはマシンのあらゆる状況がデジタルで表示される。その手前にはトランクションコントローラーとブレーキコントローラーが。この’69カマロのドライブトレインはデジタル制御なのだ。右手に付きだしたスティックは油圧式サイドブレーキかと思いきや、実はシフター。このマシンにはシーケンシャルトランスミッションが搭載されているのだ。シートは現代的なスパルコのEVOシリーズで統一し、ケージ類はオートメーター。